伊右衛門と女の子とナンパと

伊右衛門がナンパなどで女の子と知り合っておせっせしたり、負けたりしたことを綴るブログです。

結婚の話

※この話はフィクションであって欲しかった話です。

 

 

「わたし今の人と結婚することにまったく不安も迷いもない」

彼女は言った。僕はたぶん精一杯の笑顔を見せて答えた。

 

「心からそう思える相手に出会えて本当におめでとう。」

僕の笑顔の裏の苦しい泣きたい表情は繊細な彼女であれば気付いていたと思う。

 

 

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

 

彼女と最初に出会ったのは僕がナンパを始めるずっとずっと前のことだ。

大学4年の春、就職活動に勤しんでいた頃のことだった。

僕は大学のある街で一人暮らしをしていたが、実家がそれなりの都会にあったので、就活の間は実家に帰っていた。

好景気の影響か就職活動自体に特に嫌な思い出はなく、実際内定先も確保しており、もっといい条件の企業を探していた頃だったと記憶している。

 

ある企業Aの説明会の中のグループワークで彼女と最初に出会った。

残念ながらその時の記憶はほとんどない。

男ばっかりの業界だったので、女の子が少なかったから珍しいな、しかも可愛いなそう思ったくらいだったと思う。

差しさわりのない会話をしてそのまま帰宅した。

興味本位で行ってみただけで自分の志望している業界ではなかったのでその企業は受験しなかった。

当然彼女と再び会うことも会いたいと思うこともなかったはずだ。

 

それから1~2週間ほどしてとある企業Bの説明会に行った。

自由席なので何気なく適当に空いていた席に座った。

 

「うわ、久しぶり~覚えてる?」

横に座っていた女の子が親しみやすい笑顔で話しかけてきた。

 

「ああ、久しぶりやなぁ。えーっと、C社の説明会で一緒やったけ?笑」

見覚えはあったが、どこかで出会ったか忘れてしまっていた僕は最近行ったB社と同じ業界の会社名を出した。

 

「ちゃうちゃう。A社やって。ほんまに適当やな。笑」

そう言ってあきれたように答える彼女。

 

説明会が始まるまでの間就活の話などで盛り上がった。

全然業界違うA社とB社でまた会うってなんか奇跡やな~とか。

説明会が終わったのは確かちょうど昼前で、僕は確かそのあとも就活があり、彼女はそのまま帰るということだったと思う。

話していて楽しかったので昼飯に誘い、そこで同じ沿線沿いに済んでいることとか、本を読むのが好きなこととか共通点で確か盛り上がった。

 

また就活の話とか、B社の選考の進捗について話そうといって連絡先を交換した。

今思えばこの一連の流れはいわゆる就活ナンパだったなと思う。自然すぎたので自分でも気づかなかった。

 

それからちょくちょく就活の合間に時間が合うときに2人でご飯にいき、就活のことからプライベートな話まで色々した。まじめな話からノリ良い話まで色々。彼女は僕の冗談とか発言によく「ほんま適当やわ~」と言って嬉しそうに突っ込んでくれたことを覚えている。

 

けれどその時僕には恋人がいたのでそれ以上の関係を望んでいなかったし、そうする気もなかった。彼女に恋人がいたかどうかも知らない。つまりいろんな話はしたけど、恋愛の話は不思議としなかった。

ただただ一人の友人として関わっていた。なので22歳の可愛い女子大生を小汚い定食屋に連れて行ったこともあった。「こんな汚い定食屋つれていかれるの人生で1度だけやったわ笑」と後々よくネタにされた。

 

けれど僕は自然と明るく楽しい雰囲気と素直さ、けどからかうととちょっといじける、そんな彼女の雰囲気に少し惹かれていたような気がする。彼女は抜群に可愛かった。見た目も心も。そして、彼女はとても一生懸命に全力で生きている感じがしてそこがまた魅力的だった。

 

そんな自分の気持ちに気付き始めていたけど、恋人への後ろめたさと就活が終わり、僕は実家から大学のある街に戻ることになっていたので、彼女とたまにご飯に行くことはなくなった。

そう、その時点では恋心がしっかりと芽生えることはなかった。

 

 

彼女と最後にあった日からもう3年程経過したある初夏のことだった。

僕は当時の恋人と別れて、ナンパ師として活動を始めた頃だったと思う。

たまたま友人と飲んでいてしばらく連絡を取っていないLINEの友達の女の子に久しぶりに連絡するというゲームをすることになった。

 

友達の一覧をスクロールしていると、彼女の名前を見つけた。

よし、彼女にしよう。と思い連絡してみた。

 

友人と解散する頃に彼女から連絡が返ってきてなんやかんや久しぶりに会うことになった。

彼女に会う日までに少し考えたが、ナンパを始めていたが、不思議と即をしようとは考えなかった。久しぶりに彼女に会うことが純粋に楽しみだった。

 

 

約束の日、彼女は時間よりも早く待ち合わせ場所に来ていた。相変わらず可愛かった。記憶していたよりも可愛かった気がする。そして少し大人っぽくなっていた。3年という年月を感じた。

彼女は僕たちが2回目に会ったB社で働いているそうで、相変わらず一生懸命に生きていて、相変わらず魅力的だった。

 

3年の月日を埋めるように僕と彼女はたくさん話をして、たくさん笑った。

あの頃と変わらず彼女は僕の冗談とか発言に「ほんま適当やわ~」と言って嬉しそうに突っ込んでくれた。

3年前と同じく恋愛の話をすることはなかった。

この日はそのまま解散することになり、僕がまた会いたいねって言った彼女もまた会いたいねって返してくれた。

この日初めて僕は彼女に対してほのかな恋心を、けれどしっかりと芽生えた。

 

 

彼女と会ってから僕は友人と話をする機会があり、友人は僕に対していつも恋愛に積極的すぎるから押さずに引いてみたらとアドバイスをしてくれた。

また、その時の僕はナンパを始めたばかりで出撃やアポなどでとても時間がなかったし、まだまだ遊びたいし、ほかにも可愛い女の子が僕の周りにはいた。

この2つの要素があり、僕は彼女のことをゆっくり攻略しようと決めた。

 

 

彼女に次に会ったのは、前に会ってから1ヶ月も後のことだった。

その間僕は予定だけ決めて彼女とそれ以外の連絡は取らず、ナンパばっかりしていた。

彼女は時間よりも早く待ち合わせ場所に来ていた。

 

いろんな話をした後、僕らは出会ってから初めて恋愛の話をした。どうやら彼女はしばらく恋人がいないようだった。好きになれる人がなかなかいないと。

彼女はきちんとした子だったので、今はいいけどその状況がずっと続くことが良くないと思っていて、恋人を作った方がいいと思っているようだった。

一定の自分の基準を設けてそれをクリアしている人だったら付き合おうと決めていると僕に伝えてきた。

 

僕も自分の恋愛の考え方を伝えた。彼女はそれに共感してくれた。

2人の間には心地よい雰囲気が流れた。

この日もこのまま解散することにした。

 

 

彼女と会うことになった。また、前に会ってから1か月も後のことだった。

その間僕は予定だけ決めて彼女とそれ以外の連絡を取らず、ナンパばっかりしていた。

彼女はいつも僕が店を予約してくれるから今回は私に予約させてと言ってくれた。

とても気遣いができる女の子だった。

彼女は時間よりも早く待ち合わせ場所に来ていた。

 

相変わらず楽しく話をして、お互いのことをたくさん話をした。

この日も彼女は僕の冗談とか発言に「ほんま適当やわ~」と言って嬉しそうに突っ込んでくれた。

占いに行った話をすると彼女が私も行きたいというので今度一緒に行くことになった。

彼女と食事以外のデートに初めて行くことになった。

 

僕は正直、この時点で付き合いたいと思っていたのだと思う。彼女と同じくらい容姿が優れている子もいないことはなかったが、居心地の良さとか性格とか人間性がとても好きだった。

彼女からの好意もはっきりと感じていた。

でも僕はこの日もまだ踏み切れなかった。振られるのが怖かったのではなく、自分の遊びたいというエゴがはっきりと存在していた。

 

 

彼女と占いに行くことになった日は前回彼女と会ってからやはり1ヶ月も後のことだった。

その間僕は予定だけ決めてそれ以外の連絡を彼女と取らず、ナンパばっかりしていた。

ただ、決意したことがあって、この日僕は彼女に告白をし、付き合うことになったらナンパをやめることを。

彼女は時間よりも早く待ち合わせ場所に来ていた。

 

合流して、なんとなく違和感を抱いた。

いつもよりなんだか彼女が笑わない気がした。

 

そんなことを思っていると占い師の所に到着した。

 

占い師からどうやって占いますかと尋ねられ、僕が

「別々で占ってもらって、最後に2人の相性占ってもらってもいいですか?」

というと、彼女が困ったような表情で

「え、相性とかいる?」

といった。僕はたいそう動揺したが、後に引けなかったので

「ええやんええやん。とりあえず占ってもらお」

といった。

 

それぞれ仕事運等を占ってもらった後、占い師が2人の相性を占ってくれた。

占い師が2人が今どう思っているかを占ってくれた。

 

「男の子は女の子のことを結構気に入ってる感じ。」

「女の子は自信ないけど、男の子が自分のこと気に入ってくれてたらうれしいなと思っている」

 

そう占ったあと彼女はやはり困ったような表情をしていた。

 

 

晩御飯まで時間があったので、カフェ行ったり、雑貨屋さんに行ったりしたが彼女はどこか上の空で、僕の冗談とか発言にいつものように「ほんま適当やわ~」と言って嬉しそうに突っ込んでくれることはなかった。口数も少なくはっきりと気まずかった。

 

 

晩御飯の店に到着し、僕は彼女に問うた。

「占いの時ぶっちゃけ気まずかった?」

 

そう言うと彼女は決意したように口を開いた。

「実は1週間前に恋人ができた。」

「だから今日もあなたと会うの彼氏に悪いからやめようと思ったけど、約束してたしきた」

 

「おめでとう!そう言うのは早めに言ってや~笑」

僕は精一杯の作り笑いをしてヘラヘラとそう言った。彼女が困った顔をしないように。

 

「実は僕は君のこと好きやったんやけどな。」

できるだけさりげない口調でそう付け加えた。

 

 

彼女はぽつりぽつりと付き合う経緯を教えてくれた。

彼女は恋愛の話をしたとき同様、一定の基準を設けてそれをクリアしていたら付き合うと決めていた。

一定の基準を聞いたところ僕はすべて超えていたし、彼女が一番大切にしていた基準はまさに僕そのものと思うものだった。

 

当然彼女は僕のことを気になってたし、なんだったら好きだった。

 

でも僕はナンパを始めてから節々にチャラい一面が出ていた。彼女の前では隠していたつもりだけど。

そして1ヶ月に1度しか誘ってくれないし、連絡もしてくれない。口説くこともしてこないからただの友達と思われていると思った。

極め付きが僕がたまたま年の近い女性の同僚と仕事終わり歩いているところを見て、僕には違う女がいると勘違いしたそうだった。

 

そんな時に今の恋人と知り合い、恋人ははっきりと彼女のことを好きで付き合ってほしいといい、そして彼女の一定の基準を満たしていた。

そういうことだった。

 

「タイミングやな~」

彼女が少し悲しそうにしみじみ言った。

 

僕は今更になって彼女に好きと伝え、彼女の好きな部分を伝え

「おめでとう。幸せになって」

と笑顔でいい、それ以上は求めなかった。

僕は彼女が素直で可愛い反面、とても頑固な一面があること、とても人を大切にする女性であることを知っていたから。そして彼女に選ばれた恋人もまた素晴らしい男性なんだろうということを。

 

 

「幸せになる!笑

 でも、そんな風に好きなところ言ってくれてありがとう。そういう風にちゃんと伝えてくれる所本当にいいと思う。」

彼女は微笑んでそう言った。

 

 

こうして僕と彼女は解散し、僕は彼女に連絡しないことを決めた。

振られたのに不思議と晴れ晴れとした気持ちだった。

 

 

 

それから1年後。僕は小説を読んでいた。

ナンパを引退し、のんびりと過ごしていたのです。

小説を読んでいると、彼女のことを思い出しました。その作家は彼女が好きと言っていた作家でした。

 

僕は考えました。人生は一度きりしかない。恥をかくことと人生を後悔することの天秤を比較すると前者を取るしか考えられないことを。

 

彼女と連絡を取らなくなって1年。ナンパをしていてたくさんの女性と知り合ったけど彼女以上の人には出会えていないし、出会える気もしない。

 

 

決断を決め、彼女に1年振りに連絡を取ることにした。

1年ぶりに会うこととなった。

 

会うことになり僕はちょっと期待していた。彼女が恋人と別れていることを。

すんなり会うことに了承してくれたから。

それと同時にまだ彼女に恋人がいても全力で奪い取ろうと試みようと覚悟をした。

 

 

約束の日、彼女はやはり時間よりも早く待ち合わせ場所に来ていた。

1年ぶりに会った彼女は相変わらず可愛かった。記憶していたよりも可愛かった気がする。そして大人っぽくなっていた。3年ぶりに会った1年前の再開と比較すると年月が経していないのに彼女はとても大人っぽく見えた。

 

相変わらず彼女と話すのは楽しいし、心地よい。

お互いのここ1年の仕事など話をし、僕は本題に切り出した。

「最近人生調子どう?」

 

彼女は少し恥ずかしそうに

「人生の岐路って感じかな」

 

僕は核心に触れたいような触れたくないような気がしながら

「つまり?」

 

彼女は言葉選ぶように、でもしっかりと僕の目を見てこう言った

「今お付き合いしている方と結婚することになった。」

 

僕は少し驚いたけど、わかっていたのだと思う。

すんなりと言葉が出てきた。

「おめでとう。」

 

彼女は続ける

「まだ、入籍の時期とか式の予定は決まってないけど、お互いの両親にあいさつはして婚約してる。」

 

 

僕は動揺を隠し冷静を装いつつ、そこから結婚の話を聞いたり、周囲の結婚が多くなってきたよねとか話をして、僕は彼女に尋ねた。

「結婚すること迷ったり、悩んだりしたことはないん?」

 

「わたし今の人と結婚することにまったく不安も迷いもない」

彼女は言った。僕はたぶん精一杯の笑顔を見せて答えた。

 

「心からそう思える相手に出会えて本当におめでとう。」

僕の笑顔の裏の苦しい泣きたい表情は繊細な彼女であれば気付いていたと思う。

 

 

僕は彼女の表情と口調からはっきりと気付いていた。彼女の決断を。

気持ちの強さを。会った時から気付いていた。すっかり大人の表情を見せる彼女に。

僕が好きだった彼女はこの1年で僕の手が決して届かないところまで成長していた。

彼女の深い考え、しっかりとした決意。彼女の恋人が注いだ彼女への愛情。

 

対して僕がこの1年で成し遂げたものは彼女に1年前に振られて時のエピソードトークを使って、女の子を即ることだけだったのだ。

 

 

そんな僕が彼女のことを奪うことなど到底できない。したくもない。

僕には彼女とその将来の夫の幸せを祈ることしかできないとそこで悟った。

再開する前に誓った決意は易々と粉々になった。

 

 

そのあと僕と彼女はたくさん語り、たくさん笑った。

彼女は今までと同じように僕の冗談とか発言に「ほんま適当やわ~」と言って嬉しそうに突っ込んでくれた。

彼女はふとまじめな顔をして、

「でもその適当な所がとてもいい。本当は適当じゃないこと知ってるから。」

とつぶやいた。

僕はなんだか泣きそうになった。

「適当なん治さなあかんな~笑」

誤魔化すように明るく返した。

 

 

店を出るとき、僕は当然のようにお会計全額支払った。

彼女は今まで頑なに半額を出そうとし、断っても僕に押し付けてきた。

この日も半額出そうとしたが、僕がいいねん。ほんまにいいねん。

と言うと彼女は素直にありがとう。ごちそうさまです。と笑顔で僕に言った。

 

 

店を出てから

「ちょっと散歩付き合って」

と僕が言うと彼女はいいよと言ってくれた。

 

僕は歩きながら少し照れくさいようなでも少し嬉しい気持ちで

「俺、君のことが本当に好きだった」

 

と言うと彼女は嬉しそうに

「知ってる。1年前に言ってくれたやん。笑

今の私にはどうすることもできひん。けど、ありがとう。とっても嬉しい」

「好きってことをストレートに伝えてくれることが本当に嬉しい。」

 

 

「そう思える人に出会えてよかった。大人になった今でもそう思えてよかった。」

晴れ晴れした気持ちで僕は彼女にそう伝えた。

 

 

「ありがとう。出会いがあれば別れはある。別れがあるから出会いもあるって気がする。あなたにはきっといい出会いがあるよ。」

彼女は優しい顔で僕にそう伝えてくれた。

 

 

 

そうして、僕と彼女は改札前に来た。

「本当におめでとう。幸せに。」

そう言って満面の笑みで言えた気がした。

 

 

 

今度こそ僕が彼女に連絡を取ることはないだろう。今度こそ2人きりで楽しく話すことも笑うこともないだろう。今度こそ彼女が僕の冗談とか発言に「ほんま適当やわ~」と言って嬉しそうに突っ込んでくれることはないだろう。

 

彼女はきっと僕が想いを伝えたいのだろうと感じ取ってわざわざ時間を作ったのだろう。あんなに1年前に彼氏に悪いから会わない方がいいと悩んでいた彼女がすんなり会ってくれたのは彼女の優しさだらうと。

 

 

僕は自宅から一駅のいつも彼女と会っていたその場所から秋の夜風に当たって徒歩で帰った。

空気がいつもより澄んで感じた。

少し寒かった。

 

 

 

 

 

僕は彼女が実際にどう思っていたか、詳しくは聞いたことがない。

上記の物語は僕の都合の良い解釈だ。

 

でもふと思う。1年前に彼女だけを見ていれば、彼女に好きと早く伝えれば、彼氏が出来たと告げられた時に精一杯取りやめるように言えば。

そうだったら僕は今頃彼女と婚約していたのだろうかと。

 

 

きっと違う。彼女は迷った。けれど今の恋人を選んだ。彼女が彼女の恋人と築きあげてきた色々なものが今の彼女を形成している。

 

僕にそれが出来たかと言えば恐らくできなかったろうと思う。

 

 

でもちょっとくらい物語の主人公だし、妄想くらいしてもいいよな。

違う選択肢を選んでいたらと。

 

 

 

けれど僕は前に進む。二度と後悔しないように。

僕は惚れやすい。なのできっといつか自分にとって最高と思える人と出会うと確信している。

今日もまた新しい出会いを求める。